【神奈川県】箱根登山鉄道にトンネルや急カーブが多いのはなぜ?~神奈川県の鉄道~
箱根登山鉄道はトンネル、急カーブが連続し散水しながら列車が走ります。
それには日本一の登山鉄道ならではの、やさしい理由がありました。
箱根登山鉄道は自然と共存する

小田原~強羅(ごうら)を結ぶ箱根登山鉄道鉄道線(正式な路線名)の敷設計画が立てられたのは1910(明治43)年。免許交付の際、国から提示された条件が「自然を損なわない」ことでした。
箱根登山鉄道はスイスの登山鉄道に倣って敷設された
箱根登山鉄道は、当初予定された125パーミル(1㎞で125mの高低差)もの急勾配をアプト式で箱根山を登る案も、その勾配の厳しさに加え、自然の景観を損なう恐れがあることから方針変更。当時走っていたスイスの登山鉄道を参考に計画が見直されました。
箱根登山鉄道は自然景観に溶け込むように
こうして箱根の自然景観を考慮し建設されたのが、現在の箱根登山鉄道鉄道線でした。箱根の自然を守るための措置は、今も路線に見られる大きな特徴となっています。
箱根登山鉄道のトンネル・急カーブは自然や温泉脈を守るため

1919(大正8)年6月に開業した箱根湯本~強羅間(8.9㎞)の約3分の1はトンネル区間で、トンネルの数たるや13を数えました。山岳区間のトンネルは勾配を緩和、短絡させる目的がありますが、箱根登山鉄道の場合は、何よりもまず自然を損なわないことを優先しています。
いっぽう、宮ノ下~強羅間の2カ所のトンネル計画は中止されました。これはトンネルの掘削により、付近の蛇骨川(じゃこつがわ)の温泉脈に悪影響を及ぼすことがわかったため。代わって急カーブの連続する迂回ルートが敷かれましたが、この急カーブも自然を損なうことなく、山肌を縫うように走るための措置でした。沿線に最急半径30mに及ぶ急カーブが多数あるのはこうした理由からです。
箱根登山鉄道は湧き水を散水しながら走行
しかし、あまりの急カーブはレールの摩耗を早めてしまいます。通常の鉄道ではレールに塗油して対処しますが、勾配線区の箱根登山鉄道では安全確保のため、車輪の踏面に列車から散水してレールの摩耗を防いでいます。
各車両の端部には容量350リットルの水タンクが2個設けられており、箱根湯本~強羅間の1往復でほぼ空になるといいます。おもに箱根湯本駅で給水され、その水は箱根の山々からの湧き水を利用しています。
箱根登山鉄道は急勾配をスイッチバックで乗り越える
ところで、箱根登山鉄道最大の特色は、最急80パーミルにもなる急勾配です。車輪とレールの粘着力に頼った運転としては、これが日本でもっとも急な鉄道です。

国土地理院色別標高図を元に作成
箱根登山鉄道は小田原を起点に強羅までの15㎞を11駅で結びます。最急80パーミルの急勾配、急カーブ、スイッチバックで有名です。強羅駅から早雲山駅までの1.2㎞は箱根登山ケーブルカー(箱根登山鉄道鋼索線)が走り、早雲山から大涌谷などを経て桃源台までの約4㎞を箱根ロープウェイが結んでいます。桃源台駅には芦ノ湖の観光船乗り場があります。3線とも小田急グループ。なお、箱根火山の活発化により、2019年7月末日現在、ロープウェイは運休中です。
上に掲載した色別標高図を見ると、自然景観保護のため等高線(同じ色合い)に沿いつつも、これを斜めに急勾配で乗り越え、標高を稼いでいるのがわかるでしょう。急勾配だけで越えられなくなった場合には、ジグザグに折り返すスイッチバックで難所を克服しています。実際、出山信号場(塔ノ沢~大平台間)、大平台駅、上大平台信号場(大平台~宮ノ下間)と3カ所のスイッチバックが設けられています。
箱根登山鉄道に小田急線が乗り入れ
箱根登山鉄道は、1935(昭和10)年に小田原~箱根湯本間の軌道線を廃止し、鉄道線を開業。1950(昭和25)年8月からは小田急線も乗り入れていますが、当初、小田急線は別線で箱根湯本とを結ぶ計画でした。これをレール幅の異なる2社の線路を3線軌条にし、箱根登山鉄道と同一線での乗り入れとした理由は、それがもっとも合理的だったし、自然を損なわないための配慮でもあったことはいうまでもありません。
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