【神奈川県】箱根火山はどうやってできた?~中心に巨大カルデラを有する今なお活発な活動を続ける火山
芦ノ湖など風光明媚な景色はもちろん、箱根湯本や強羅のほか「箱根十七湯」と呼ばれる大小17の温泉地が集結した一大温泉リゾート地となっている箱根。これらはすべて火山の恩恵といえます。
今なお活発な活動を続ける箱根火山は、どのようにして生まれたのでしょうか?
箱根山】箱根火山の構成
神奈川県南西部に位置する箱根山(火山)は、ひとつの山があるわけではなく、明星ヶ岳、明神ヶ岳、金時山など多くの山々からなる地域全体を指します。
構成要素は、ドーナツ状に連なる外輪山、それに囲まれたカルデラ、カルデラ内の比較的小さな火山群(中央火口丘)など非常に複雑な特徴をもっています。カルデラ内の西側には、県内最大の湖、芦ノ湖があります。
なお、箱根山のカルデラは、およそ東西8㎞、南北12㎞に及んでいます。そして、このカルデラがどうやってできたのかは、日本に地質学が導入された明治時代初期から論争の的になってきました。

【箱根山】箱根火山の特徴

約3000年前にできた冠ヶ岳の北斜面である大涌谷では、今も噴気が上がっている。箱根が活火山であることがわかる。
箱根火山が活動を始めたのは、これまでの研究により約40万年前とされています。そして、初期の火山はサラサラとした玄武岩質の溶岩を噴出し、円錐状でなだらかな裾野をもつ火山と考えられていました。
このように、山頂の火口から交互に噴出された溶岩や火山砕屑物などが積み重なってできた円錐型の火山を成層火山といいます。富士山をはじめ、日本各地にこの成層火山は見られます。
【箱根山】箱根火山の形成と構造
現在の箱根山の地形を見ると、巨大な山を標高1100mくらいで水平に切り、内側を凹ませ、その内部に複数の小さな火山を置いたように見えます。それはまるで、ひとつの巨大火山が噴火したことで形成されたようでもあります。
事実、近年まで箱根山は巨大な成層火山だったと考えられてきました。しかし、外輪山などの調査から、そうではないことが判明。
成層火山は一般的に山頂火口へ向かって徐々に高くなっていく構造をもちますが、箱根の外輪山は、火口に向かって低くなる構造で、しかも外輪山の溶岩が形成された時期にバラつきがあることなどがわかったのです。
こうして、太古の箱根火山は、小型や中型火山の集合体だったとする説が有力視されるようになりました。
【箱根山】箱根火山形成の歴史
【箱根山】40万~23万年前の箱根火山
箱根火山の形成史をたどってみると、まず約40万~23万年前に、何度も繰り返される噴火によって、中型~小型の成層火山が連なった火山群が形成されました。金時山や明星ヶ岳を形づくっている溶岩は、この時代のものです。
【箱根山】23万~13万年前の箱根火山
その後、約23万~13万年前には火山群の中央部で大規模な噴火活動が何度も起き、火砕流が発生。なお、巨大な陥没地形のカルデラがいつ形成されたかはわかっていませんが、大規模噴火活動中だった約18万年前、箱根火山から噴出した火山灰に含まれる火山豆石(まめいし)に淡水生の珪藻(けいそう)が含まれていたことから、この頃にはすでに、カルデラ内に湖ができていたことになります。
【箱根山】13万~8万年前の箱根火山
次いで約13万~8万年前には、カルデラの内側でだけ噴火が起こるようになり、鷹巣山、浅間山、屏風山などの比較的山頂が平らで、台地状の形の山(前期中央火口丘)がつくられました。
【箱根山】8万~4万年前以降の箱根火山
そして約8万~4万年前、激しい噴火が何度も起こり、新しいカルデラが形成されました。なかでも箱根火山史上最大級となった約6万6000年前(約4万9000年前とも)の噴火では、地上近くに上ってきたマグマが激しく発泡し、火山砕屑物となって噴出。巨大な噴煙は成層圏にまで達したと見られています。
このときの噴煙に含まれていた火山灰や軽石は、偏西風によって東へ流され、とりわけ軽石は神奈川県をはじめとした関東一円に広く堆積。この軽石は、東京の山手や武蔵野台地では地下6~7m付近で厚さ20㎝ほどの地層になっており、東京軽石層(東京パミス)と呼ばれています。
さらに、この噴火では大規模な火砕流が発生。火砕流の堆積物は、東は横浜市、西は静岡県富士宮市、北は丹沢山地、南は伊豆半島中部まで達していることがわかっています。このときの噴火による堆積物の分布は、各地の地質形成の時期を推測する重要な指標にもなっています。
この大噴火後、約4万年前以降には爆発的な噴火は見られなくなり、粘度の高い安山岩質や流紋岩質のマグマが噴出して固まった溶岩ドームや小型成層火山からなる後期中央火口丘が形成されました。このときできたのが神山(成層火山)や駒ヶ岳、二子山、早雲山などの溶岩ドームです。

駒ヶ岳(標高1356m)山頂部の溶岩ドームは、約2万~1万8000年前に形成された。
【箱根山】現在の箱根火山の火山活動
箱根の地形は、このように非常に複雑な過程を経てできあがったと考えられています。
ちなみに、箱根火山の最後のマグマ噴火は約3000年前。神山北部が山体崩壊し、その崩壊面にできた馬蹄形の凹地(現在の大涌谷)にマグマが噴出、冠ヶ岳溶岩ドームが形成されています。
それ以後、おもな火山活動は大涌谷で発生するようになり、火山ガスや水蒸気を噴出するだけで、2019年7月までにマグマの噴出は見られていません。
いっぽうで、大涌谷周辺では今も活発な噴気活動が続き、2015年6月には、大涌谷の噴気孔周辺で火山灰が観測され、箱根火山の観測史上初めてとなる、ごく小規模な噴火が確認されました。さらに、2019年3月中頃からは、火山の地下でマグマやガスなどの供給が続いていると見られる山体膨張を示す変化が観測されています。そのため気象庁は、2019年5月に「箱根山では、大涌谷周辺の想定火口域内に影響を及ぼす噴火が発生する可能性がある」として、噴火警戒レベルを1(活火山であることに留意)から2(火口周辺規制)に引き上げたのは記憶に新しいですね。
【箱根山】芦ノ湖はどのようにして生まれた?
箱根随一の景勝地といってもいい芦ノ湖は、箱根の火山活動によってできたカルデラ湖です。約3000年前、箱根火山の中央火口丘のひとつである神山が水蒸気爆発を起こし、山体崩壊しました。その際に発生した岩屑なだれが西方面へ流れ、仙石原を流れていた早川をせき止めて芦ノ湖が形成されたと見られています。
そのいっぽうで、最近の研究で、それ以前にカルデラ内には「先芦ノ湖」と呼ばれる湖が存在し、火山活動によって拡大・縮小を繰り返していたといわれています。この場合、先芦ノ湖に神山の岩屑なだれが流れ込み、同時に早川をせき止めて芦ノ湖ができたというシナリオになります。
ところで、芦ノ湖の水源はほとんどが湖底からの湧水と考えられています。また、江戸時代に西側の外輪山に掘られた隧道(用水路)を使って、水利権をもつ静岡県へ芦ノ湖の水が供給されています。

海賊船などの観光船でも人気の芦ノ湖
【箱根山】箱根火山は火山研究のホットスポット!
箱根はインバウンドを含めた人気の観光地であり、また生きた火山活動が見られる貴重な場として常時観測が続けられています。箱根火山は、今も活発に活動を続ける火山研究のホットスポットなのです。
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