【東京都】昭和44年の新宿東口映画館街を歩く 【東京都新宿区】
執筆:オフィス プラネイロ
新宿といえば、今も昔も変わらぬ、東京を代表する歓楽街です。しかし、そこにあるお店や施設は、半世紀で大きく変わったもの、変わらないもの、きっと色々あるでしょう。
「ちょっと昔の地図さんぽ」 今回は趣向を変えて、当時の地図をもって1969(昭和44)年の新宿駅前を机上散歩してみましょう。
では1969年の東京にタイムトリップ!
都電に乗って新宿へ、話題の店でランチ。そのあとは東口の映画館街へ
今日は1969年9月のある土曜日。天気は秋晴れです。午前中、自宅近くの停留所から都電(注1)13系統新宿駅行きに乗車。
新宿三丁目にある伊勢丹別館前の「四谷三光町」停留所で下車、ぶらぶらと歩き始めます。
(注1) 都電(東京都電車)=路面電車。翌1970年、この系統は廃止された。他の路線も一部を除き1972年全廃。当時の初乗り運賃は20円ほど。
お昼には少し早いですが、評判の洋食店「アカシア」(注2)へ。ロールキャベツシチューをいただきます。
お腹を満たしたあとは、伊勢丹の道路向いにある映画館街へ向かいます。「文化」「大映」「東宝」「京映」「東映」・・・色々あって迷ってしまいます。
(注2)新宿「アカシア」は1963年創業。現在も同じ場所(新宿三丁目)で営業中
映画館街は、新宿駅東口付近にもありました。地図では、○に「映」というシンボルが映画館を示しています。
「国際劇場」「昭和館」「日活」などの名前が見てとれます。
見たい映画が中々決まらず、しばらく色々見て歩くことにしました 。
高層ビルがテーマ? 1969年のヒット映画とは
ここで、この年のヒット作品を幾つか紹介しましょう。当時の大人鑑賞料金は全国平均300円程度でした。新作封切り館は、これよりもう少し高かったかもしれません。
■栄光への5000キロ 【出演】石原裕次郎、浅丘ルリ子、三船敏郎ほか 【監督】蔵原惟繕
■ブリット 【出演】スティーブ・マックィーンほか 【監督】ピーター・イエーツ
■日本海大海戦 【出演】三船敏郎、加山雄三、仲代達矢ほか 【監督】丸山誠治
■超高層のあけぼの 【出演】池部良、丹波哲郎ほか 【監督】関川秀雄
・・・懐かしい俳優さんの名前が並びますね。
この年の配給収入一位は「栄光への5000キロ」。サファリラリーに情熱を燃やす男の物語で、多数の海外ロケや迫力あるレースシーンが話題を呼んだそうです。「ブリット」は、サンフランシスコを舞台にしたカーアクション映画でした。
最後に挙げた「超高層のあけぼの」は、「霞が関ビル」(注3)を完成させた男たちの物語。完成当時、このビルは「超高層」と呼ばれ、日本一の高さでした。前年1968年に完成したばかり。きっと世間の話題になったことでしょう。それが映画のメインテーマになるとは、時代の空気を感じますね。
(注3)霞が関ビル(千代田区霞が関三丁目)周辺図 1968年地図/昭文社より ※地図上では「三井霞ヶ関ビル」と表記されています
日本の映画館。その数は半世紀でどう変わった?
ところで、かつて「斜陽」とも言われた映画産業ですが、半世紀前とくらべ、現在の映画館の数どうなっているのでしょうか。
以下は、全国の映画館における「スクリーン数」「入場者数」「平均(鑑賞)料金」を、統計から抜粋した数字です。(注4)
1960年 =7457 (過去1955年~2025年の最大値)・約10.9億人・72円
1969年 =3602・約2.8億人・295円
2025年 =3697・約1.9億人・2200円
テレビの急速な普及が要因でしょうか、1960年から1969年の間で、スクリーン数と入場者数は大きく減少しています。この頃が「映画離れ」が一番深刻だった時期かもしれません。
意外なことに、1969年と現在では、スクリーン数はほぼ変わっていませんでした。漠然と「映画離れ」により映画館は減っている、と考えていたのですが、予想を裏切られました。
ただし、現在は「シネコン」(シネマコンプレックス=複数スクリーンをもつ映画館)が全スクリーン数の90%近くを占めています。つまり「従来タイプの映画館」は大きく減少しているのです。(注4)
(注4)【出典】日本映画産業統計(一般社団法人日本映画製作者連盟)
映画の後は、喫茶店。買い物して帰路につきます
さて、1969年の新宿に戻りましょう。
映画を無事見終わりました。その後は、近くの喫茶店「らんぶる」(注5)で一服です。珈琲を飲みながら映画の余韻を楽しんだあとは、「三平ストア」(注6)(上図に記載あり)で、お買い得の鮮魚を大量買いです。
暗くなりかけた夕暮れの靖国通りを、国鉄(日本国有鉄道=現・JR東日本)新宿駅へ向かいます。駅構内には、前年の「新宿騒乱」(注7)の爪痕がまだ残っていました。キミドリ色の山手線電車で、帰路につきました。
(注5)名曲・珈琲「新宿らんぶる」(新宿三丁目)は1950年開業。現在も当時と変わらず営業中
(注6)「三平ストア」は、現在も総合スーパーとして、当時とほぼ同じ場所(新宿三丁目)で営業中
(注7)1968年10月国際反戦デーに起こった学生を中心とする暴動事件。新宿駅構内では、施設などの破壊行為があり、多数の検挙者を出した
現在の新宿駅東口・新宿三丁目 今も変わらず営業する映画館も
さて、現代に戻りましょう。
こちらは現在の新宿駅東口付近です。
駅東口前には「武蔵野館」という劇場(映画館)が見えます。この施設は、冒頭の1969年地図でも、全く同じ場所にあります。
当時と今を比較すると、昭和館→K’s cinema 、松竹→新宿ピカデリー、東映→新宿バルト9 といった具合に、同じ場所で別の映画館として営業しているケースも多いです。
これ以外にも、新宿三丁目界隈では、今も多くの映画館が営業しています。昭和の新宿映画館文化の遺伝子は、今もしっかり継承されているようですね。
今回は、1969年の新宿地図を机上散歩し、映画館のちょっとした歴史を紐解いてみました。
みなさんも「ちょっと昔」地図から、小さな時間旅行に出かけてみては如何でしょうか。
【参考とした資料:新宿東口商店街ホームページ】




