【山梨県・長野県】八ヶ岳の黒曜石と縄文遺跡~「星降る里」といわれたいにしえの八ヶ岳周辺

【山梨県・長野県】八ヶ岳の黒曜石と縄文遺跡~「星降る里」といわれたいにしえの八ヶ岳周辺

日本の中心に位置する中部高地は、掘り出された黒曜石のかけらが輝く様から、「星降る里」と言い伝えられてきました。
そこから伝わる縄文人の思いに迫ってみましょう。


八ヶ岳の黒曜石

山梨県と長野県にまたがる八ヶ岳の山麓、中部高地には、黒曜石(こくようせき)の採掘に関する本州最大の遺跡があります黒曜石は火山が生み出した天然ガラスで、狩猟採集民族であった縄文の人たちの暮らしには欠かせないものでした。

日本列島で黒曜石が採掘される場所は北海道から九州まで100カ所以上ありますが、八ヶ岳周辺で採れる黒曜石は純度が高く高品質であり、割れ口が鋭く加工しやすかったのです。そのため、矢じりやナイフをはじめとする多彩な石器づくりの材料として広く利用されていました。

八ヶ岳周辺のおもの黒曜石原産地と代表的な遺跡

安道寺遺跡出土品
大きな水煙文の把手があり、特別な祭礼に使われたと思われます。

殿林遺跡出土品
中部高地の縄文文化を代表する、重要文化財の深鉢形土器。

一の沢遺跡出土品
出土品の土器は、大きな中空の把手が特徴的です。

酒呑場遺跡出土品
八ヶ岳南麓を代表する大規模な集落遺跡からの出土品。

 

八ヶ岳の黒曜石からついた星がつく地名

中部高地で黒曜石が出土する場所には「星糞峠(ほしくそとうげ)」「星ヶ塔」「星ヶ台」など、「星」がつく地名がたくさんあります。これは、足元でキラキラ光る黒曜石のかけらを、人々が空から降ってきた星のかけらだと信じたことが由来であるといわれています。

星糞峠の黒曜石鉱山では、ドーナツ形の土手の中央部にクレーター状の窪みがあり、縄文人が黒曜石を掘り出していた痕跡を見ることができます。

 

八ヶ岳の黒曜石の広域流通

掘り出された黒曜石は、麓の村から村へと運ばれていき、村を結ぶ道は「黒曜石の道」となっていきました。この地で採れた黒曜石は、遠く離れた北海道の遺跡からも見つかっており、良質な黒曜石を求めて遠くの地域から他の縄文人が訪れていたようです。

現在のような運搬手段がなかった時代に、いったいどのように運んでいたのかは謎に包まれていますが、産地限定の黒曜石が大量に、しかも広域に流通していたという事実は、この石がいかにハイブランドで人気が高かったのかを物語っています。

この黒曜石の交易を通して、人や物、情報などがこの山麓に集まった結果、芸術性が高く当時の人々の精神性がよくわかる資料が多く作られたと考えられます。

 

八ヶ岳周辺の縄文土器の特徴

また、八ヶ岳周辺の縄文遺跡からは黒曜石のほかにも多くの土器や土偶が見つかっています。縄文中期の土器は、華やかさや芸術性の高さが特徴です。土器には水の流れや森の草木、そして人や動物の姿がいきいきと立体的に描かれており、ここでは国内外でも類まれなる土器文化が発達していたといえます。

鋳物師屋前遺跡(いもじやまえいせき)や津金御所前遺跡などの出土品には、母から生まれようとする子どもの顔や歌い踊るような人の姿も描かれており、まるで当時の生活の一部をそのままに伝えているようです。

女性、とりわけ妊婦を表現しているものが多いことも特徴的で、棚畑遺跡から出土した「縄文のヴィーナス」は、縄文時代の遺物として初めて国宝に指定されました。この地が生み出す縄文土器のその特有な文様やデザインには、この地の人々の死生観や精神世界などが、 強くこめられているのかもしれません。

国宝「土偶」(縄文のビーナス)

八ヶ岳山麓の土偶の特徴と造形美を合わせ持ち、当時の精神文化を考えるためにも貴重な学術資料であることから、縄文時代の遺跡から見つかったものの中で初めて国宝に指定されました。

 

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